京都高低差崖会

京都高低差崖会は京都の凸凹地形を探索しています。平地ではいられなかった、高低差が生まれてしまった、京都ならではの「まちの物語」「土地の記憶」を読み解いていきます!

向島城のフィールドワーク記録:高低差で遺構確認

@chang_umeです。先日、京都市伏見区の「向島城」の遺構探索フィールドワークに崖会員数名で行ってきました。天下人・豊臣秀吉が築造した城に関わらず、向島城は存在が非常にマイナーで以前からとても気になっていたのです。いわゆる「残ってない」扱いをされやすい城ですね。

向島城とは
向島城は、豊臣秀吉が通称「指月(しげつ)の岡」(現・京都市伏見区桃山町泰長老)に築いた伏見城(指月城)の支城として、宇治川を隔てた南側に築かれました。
この城は、文禄3年(1594)の冬または翌年の春には着工したと考えられ、伏見城との間に流れる宇治川には豊後橋(現・観月橋)が架けられていました。
しかし、文禄4年の大雨によって洪水の直撃を受け、さらに再建工事中に慶長の大地震にあって崩壊しました。その後秀吉が再建し、秀吉の没後は家康の一時的な居城となったこともありました。
現在向島城の跡地には民家が立ち並んでおり、わずかに「向島本丸町」「向島二ノ丸町」等の地名に痕跡をとどめるのみとなっています。
豊臣秀吉の造った向島城(むかいじまじょう)について書かれた資料を知りたい。(レファレンス協同データベース)

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●図:向島城の復元図*1

●地図:向島城の位置

*1:山田邦和2001「伏見城とその城下町の復元」『豊臣秀吉と京都 ―聚楽第御土居伏見城』文理閣より作図

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カシミール3Dの使い方:5mメッシュ地形図作成

@chang_umeです。高低差や各種地形の探索や分析に、「カシミール3D」を使用する人は多いでしょう。私もその一人なのですが、改めて設定方法や使い方についてガイダンスしたいと思います。

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●図:カシミール3Dの動作画面

今回はガイダンス第一弾ですが、カシミール3Dは大変高機能で操作体系も極めて幅広い仕様となっています。そのため私自身が把握している使い方は、カシミール3Dで可能なことの極々一部と思ってください(ご容赦くださいね)。

カシミール3Dを使ってできること

カシミール3Dは、かれこれ10年以上も開発されているプログラムです。ユーザーも多くて各種地形図を取得して閲覧したり、自分なりの地図を作成したりすることができますが、なんといっても5mメッシュ地形図(3D地形図)の作成が数多い機能の中でも白眉と思います。

カシミール3Dについて
国土地理院の無料地図サービス(地理院地図)の地図や空中写真から、カシミール3Dに最適化した「山旅倶楽部」有料地図まで使用できます。

今回の記事ではまず、

  1. カシミール3Dを導入(インストール)すること
  2. 5mメッシュ地形図(以下、3D地形図)を作成すること

この2項目までいってみましょう。

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京都盆地の基盤岩: 露頭する岩石、磐座信仰

@chang_umeです。僕らの大地は岩でできています。地表下にあるこの基盤層となる岩を基盤岩と呼びますが、京都盆地の場合は、断層を境とした沈降作用で生まれた凹面状の地形(構造盆地)であるため、基盤岩はずいぶんと深い位置に横たわっています。

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● 図:京都盆地の南北断面*1

京都盆地は基本的に南から北に向かって標高が上がっていきますが、基盤岩の深さも地表面の傾斜に比例して南北で差がとても大きくなっています。

したがって北に向かうほど、基盤岩までの深度が小さくなるわけで、たとえば基盤岩の地表からの深度は北部・洛中の市街地で地下約200〜300m、南部・低地の旧巨椋池付近で地下約800mほどの深さとなるのです。ずいぶんと深い位置に基盤岩は横たわっていることが分かります。

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図:重力探査から推定された基盤岩深度分布*2

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「橋跡」の発見:道路の起伏と「小川」旧河道

上御霊前通と小川通の交差点(上御霊前通小川西入ル)に、道路をまたぐ高低差を見つけました。交差点を挟んで、上御霊前通と小川通の両方でゆるやかにカーブを描く起伏が道路に生まれています。

ほかによく見ると、上御霊前通の道路端にコンクリートの奇妙な物体もありました。道路に生まれた高低差と路傍のコンクリート物体、これはいったいなんでしょうか?

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● 写真:道路(上御霊前通小川西入ル)の高低差


● 地図で確認(Googleマップ

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まぼろしの「大仏」:巨大すぎて変えられない地形

京都で観察できる、前近代の大規模な自然改変・人工地形といえば、やはり豊臣期の遺構です。豊臣期に造成された人工地形は御土居伏見城・城下町が有名ですが、他にも大規模な遺構をまだまだ見ることができます。

東山に巨大なマウンド状地形

今回ご紹介の地図は「京都市明細図」です。

京都市明細図とは
京都市明細図は、1,200分の1の縮尺で描かれた大縮尺の地図であり、いわゆる火災保険図(火保図)と呼ばれる地図の一種である。 1927年ごろに大日本聯合火災保険協会京都地方会によって作成されたもので、1942年まで部分的な更新が行なわれてきた。 その後、1950年から1951年にかけて、手書きによる彩色や書き込みが施され、戦後の情報も付け加えられている。 なお、京都市明細図の原図は、京都府立総合資料館において所蔵・公開されている。
ArcGIS-京都市明細図(Large Scale Maps of Kyoto City, 1927-1951)

京都市東山区の東山七条(東大路通七条通の交差点)周辺をクローズアップしてみました。三十三間堂の北側に、巨大な「マウンド」のような地形が描かれていることが分かりますか。見やすいように、マウンドの箇所を緑色に着色しました。

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● 図:東山のマウンド状地形(京都市明細図を改変)


● 現在の地図で確認

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